去年の初夏、 彼からいつもは来ない時間に携帯のメールが入りました。 「実家の母が脳梗塞で倒れて緊急手術をするので今から実家へ行く。 病院だからメール出来ないけどごめんね。」
目の前が暗くなりました。
その3ヶ月前、いつものように金土日で山中湖へ泊まりに行き、 彼は月曜日に実家の近くで仕事があるから日曜の夜は実家に泊まると 言っていたので、実家まで1本で行ける私鉄の駅まで 車で行こうとしていました。
「実家にはもう2年以上帰ってないな。」 そう言っていたので、本当は離れたくなかったけれど、 ご両親も来るのを楽しみにしているだろうと、 「帰らないで・・」その言葉を飲み込んでいました。
駅に着いて、「じゃあ、気を付けてね。たまには 親孝行してね」そう言って私は渋滞している駅のロータリーに 入りました。
30メートルくらい進んだ所で携帯が鳴りました。 「なんか忘れ物でもしたのかな?」 電話に出ると、「やっぱり一緒に今夜も泊まりたいから 車を止めて待ってて」 渋滞しているので彼はすぐに追いつきました。
車に乗って来た時、私は戸惑いました。 ものすごく嬉しかった。 けれども、ご両親に会わせてあげたい。 私と会うよりも会ってないんだもん。
彼は結婚する時、ご両親に大反対されたそうです。 なので、式も挙げてない。 そして、1人いる自分の子供をご両親に会わせた事がないそうです。
自分の孫に会った事が無い。 ちょっと信じられませんでした。
そんな事を聞いていたので、やっぱりご両親に会わせてあげたかった。
彼は車に乗ってから「あ~あ、これで俺の人生変わっちゃったぜ。 親よりもおまえを選んじゃった。これで親が死んだらどうする?」
そんな事を言われたら私も困ります。
「やっぱり実家へ行っておいでよ。私とは又会えるじゃん。」 けれども彼は降りようとしませんでした。
内心はとっても嬉しかった。 彼は助手席で都内のホテルをiモードで予約をしていました。
まさか3ヵ月後にそんな事が起きようとは思っていなかったから。
お母さんの手術は長い時間かかったようです。 私は様子がわからないので眠れない夜を過ごしました。 そして「もしかしてこれでお別れになるのかなぁ・・・」 そう思いました。
きっと彼は奥さんと一緒に病院へ行ってるはず。 最悪な事は考えたくなかったけれど、万が一、お母さんが 亡くなったら葬儀など、いろいろな行事がある。 奥さんはやっぱり長男の嫁だから、いろいろ働くだろうし そんな奥さんを見て彼は感謝して家庭が上手くいくようになるんじゃないか。
そんな事を考えていました。
夜中に彼からメールが入りました。 「手術が長いから実家にお風呂に入りに来た。 まだ手術は終らないけど一命はとりとめたよ。 心配かけてごめんね。」
「奥さんは一緒じゃないの?」怖いけれど聞きました。 「来る訳ないだろう」そう答えが返ってきました。
ホッとした気持ちと信じられない気持ちと半々でした。
脳梗塞で倒れたと聞いたら、万が一の場合、亡くなる可能性もありますよね。 (素人なのでわかりませんが。) そんな時でも奥さんは行かない・・・。どういう家庭なんだろう?? ものすごく悲しい気持ちになりました。
私がそんな事を言える立場ではありませんが、 せめてそういう時くらい行くのが普通だろう。 奥さんは彼のご両親の事をどう思っているのだろう・・。
奥さんも、結婚する時に自分のご両親に反対されたそうです。 そんなに熱烈に恋愛した2人がなぜ?
あれから1年、彼は月に一度、私に会いに来るのがメインなのか お見舞いに行くのがメインなのか自分でもわからないなぁ。 そういいながらこちらに来ています。
もちろん、奥さんは一度もお見舞いに来ていません。
お母さんはずっと昏睡状態で意識がありません・・。
追記 2003年8月18日
彼のお母さんは天国へと召されました・・。 肺炎をおこし、呼吸が苦しそうだったから楽になれたんだと 彼は言いました。 影ながら、お母さんのご冥福をお祈りいたします・・。
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